[いしかわまち魅力再発見] 座談会 第1回

福島県石川町で子育て中のママをお招きし、石川町の魅力を再発見するための座談会企画。記念すべき第1回は、ご家族で石川町に移住された、紀陸 聖子さんにお話を伺いました。

紀陸 聖子さん
石川町に2013年に移住し農業に携わる。夫と子ども4きょうだいの6人家族。

やりたい農業を追求し、導かれるように石川町にたどり着いた

ー 移住するまでのストーリーを教えて下さい。

「以前は群馬県の昭和村に約15年ほど住み、夫は現地で農業法人の従業員として働いていました。

昭和村は農業が盛んで若い後継者世代も多く、土地が余っていなくて新規就農でも農地を借りにくい状況でした。アパート以外の住居も探しにくかったので、住み続けるかどうかを迷っていたんです。けれど東日本大震災(2011年)があったことと、長男の小学校入学を機に、福島県に移住しようと決めました。

その後いろいろと情報を収集する中で石川町に巡り会いましたが、最初は、農業を行うつもりはありませんでした。けれど役場の方が畑を持つ地主さんを紹介してくださったり、多方面でフォローをしてくださったりしたので、就農を決めました」

ー ある移住候補先から、何故、石川町を選んだのでしょう?

「学生時代の友人の奥様が、石川町役場で働いていたことがご縁となり、情報収集がしやすかったことが一つです。移住相談窓口の担当者さんが、本当に親身に相談に乗ってくれたことも大きかったですね。

そもそも福島県を選んだことに、実は思いがあって……東日本大震災発生後に、『震災を外から支援するのではなく、我が身に起きたこととして捉えたい』と強く感じたんです。

いろいろな理由や要因が絡み合い、石川町に決めることとなりました。今振り返ると、導かれたように思えてなりません」

子どもがいたから、この土地でより多くの人間関係を築けた

ー 実際に石川町に住んでみて、日々、どのように感じていますか?

「私たちは田舎から田舎への移住だったので、都会から移住する方に比べたら、生活面で感じるギャップは少ない方だと思います。

それでも差を感じる部分としては、ひとの気質面の違いですね。群馬では比較的、母親が強い文化という印象でしたが、福島の女性は奥ゆかしく、男性を立てる文化があるように思えます。

引っ越してきて間もなく町のママ達とお話をした時に、『わ、冗談でも、旦那さんの悪口を誰も言わない……!』とビックリしたことも(笑)。

そのほか、田舎だからこそある温かい人間関係があり、ありがたく感じています。

四男を背負ってスーパーで出荷作業をしていたら、見知らぬお客様がおもちゃを買ってきて子守りしてくださったり、子どもをカートに乗せてスーパー内を散歩し、お菓子を買ってきてくださったり……」

ー 人と人との距離感が近く、見守り合えるような環境があるのですね。

「正直なところ自分には、都会での育児はもう無理だな~って思ってるんです。

以前、どうしても保育参観に行けなかった時、出荷先のパートさんが行ってくださったことがあって。先生方も、事情を理解して特例を許可してくださるなどの大らかさがあります。

子どものことで神経を尖らせる場面は、都会に比べるととても少ないんです。一人で子育てと戦うのではなく、地域全体で子どもを見守り合う空気があるのには、とても救われています。

地域や人を頼れるようになったのも、田舎暮らしを経験したからこそかもしれません。家族以外の誰かに頼るのって、心情的にも物理的にも難しいけれど、外に向かって素直に助けを求められる暮らしは、人間性が豊かな気がするんです。

特に田舎では、たとえ知らない間柄だとしても、自分の扉を自分で開けて“助けて!”といえば、手を差し伸べてくれる人が多い気がしています」

ー 移住に際し、お子さんがいらっしゃることで不安だった点はありましたか?

「『子どもがいるから、移住が心配』という声を聞くことがありますが、私にとっては『子どもがいるから移住後が楽』でした。

子どもは環境の変化への順応性が高いので、移住後、意識せずともお付き合いの幅が格段に広がったんです。
地域の方とたくさんの人間関係が築けたのは、子どもたちがいてくれたからです」

ー 子育て環境について、石川町の取り組みはいかがですか?

「子育て家庭に向けた様々な支援があると思います。けれど一方で、情報が必要な住民に、必要な情報が届きにくい印象はあります。それと、保育料は、少し高い傾向にあるのかもしれません。

また、町内は公共の交通網が少ないため、移動時は住民個人の車がメイン。けれど自宅と園や学校間に距離があって、子どもの送迎にすごく時間がかかります。町からのサポートがあればと願う部分です」

石川町の伝統や文化を、後世に受け継いでゆきたい

ー では少し話題を変えて。普段、生活の情報はどうやって集めていますか?

「インターネットと新聞、テレビが主な手段です。関東に比べたらテレビ局も番組の数もかなり減りますけれど(笑)。生きた情報は各地域の自治センターの催しや、個人のお友達付き合いの中で自然と集まりますね。

手に入りにくいものとしては、“今すぐほしいモノ”です。けれど、都会と同じ物質を求め、環境だけ田舎を望むなんてスタイルは、あまり意味がないのではと思っていて。

生きていくのに要らないものって結構たくさんあるんですよね。石川町での生活を通して、私は、そういうものをちょっとずつ落としていきました」

ー 町で生きることで、新しい価値観も得ることができたのですね。では、そんな石川町の魅力とは?

「お米や田んぼなど、日本ならではの原風景が豊かです。石川町は日本三大ペグマタイト鉱物産地の一つに数えられるので、鉱物や石など地質学も身近にあります。
また近隣の市町村含め、日本酒が有名ですし、食べ物もとても美味しい。

そして、ひとですね。思いやりと人情味あふれる人間関係が、ここにはあります」

ー ひと・自然・食のそれぞれに豊かな環境が揃う石川町ですが、町の未来のために、ご自身が目指すことはありますか?

「いち農家として、地域の食と環境に貢献していきたい、“百姓”としてこの地に根をはって生きていきたいと思っています。

豊かな農作物が採れる農地や、良い伝統文化の数々を次世代に受け継ぎたい。地域をよりよい形で子ども達に受け渡していけるよう、当事者として真剣に考えていきたいです」

ー 移住を検討している方へ、メッセージをお願いします。

「地方への移住時において大切なのは、どのように住み、どのような人生を送るかのプランを先に考えておくこと、だと思います。特に子育て世代なら、暮らしの中で“最低限、譲れない部分”を一つもしくはいくつか決めておき、それ以外については大らかでいること、は重要かなと思います。

ここは田舎ですから、自然や食べ物などいい点はあるけれど、暮らしにくい部分は確かにあります。ですから、石川町に越したからと言って、いつの間にか必ず幸せになれるわけではないんです。
結局、どこでどう暮らしても自分は自分ですし、どう生きていくかと決意できたなら、場所は田舎も都会も関係ない。だから“いいところも悪いところもひっくるめて好きになって、ここで当事者として生きてやる!”って気合いを持つことは大切かもしれません」